チェンジリング

イーストウッドで誘拐物ときますと「ミスティック・リバー」を思い出しますわな。
 造りかけのLAを舞台に、市警の徹底した腐敗を背景とし、アンジェリーナ・ジョリー演じるシングルマザーの子供の誘拐から物語ははじまる。誘拐された息子が発見されたかと思われるが、ジョリーは別人と確信し抗議をするが警察は面子に掛けて否定。さらに警察批判の先鋒である牧師による支援運動が本格化するのを見て、彼女を精神病院に強制入院させてしまう。
 というのが一幕目のストーリー。
 レトロなLAを語るのに映画ではさまざまな切り口が使われてきた。「チャイナタウン」の水、続編の油。「ダイハード3」の地下鉄などが思い浮かぶ。
 今回キーとなるイメージはまず電話(機)。ヒロインのアンジェリーナ・ジョリーが電話局に勤めてるだけあって、クラシックなデザインの電話機が随所に出てくる。
 次に市電。この頃LAでも市電が走ってたんですね。これは単なる時代を表すアイテムではない。イーストウッド・ファンならば、その形状から、LAの北にあるケーブルカーの走る街と、そこで約40年後に繰り広げられるはずの物語を思い出すだろう。
 また最近のイーストウッドらしくリバタニズムに満ちていてる。腐敗したLAPDに立ち向かおうとする牧師、弁護士、歯科医、教師がプロとして異議を申し立てるところが実に格好いい。「スパイダーマン2」のNYの地下鉄乗客がドクター・オクトパスに立ち向かうところのようだ。
 またLAPDにあっても、誘拐事件解決にあたろうとする刑事がいる。彼が捜査の過程でギズモノとなのも「ブラッド・ワーク」などでおなじみの描写。
 誘拐事件の犯人がまさしく大きな子供で、アンジェリーナと彼と擬似親子的関係が倒錯していて○。駄々っ子にオシオキをする感じというか。また反LAPDという面では共闘関係がなりたってしまうのだ。

 ラスト近く、アンジェリーナ達の顔の演技は「裁かるるジャンヌ」に迫るものがある。