ダーウィンの悪夢

 エキサイトで試写があたったので観に行った。衛星とはいえ一度TVでやったものを公開するというのはなかなか無い事。そのため私のなかの”まだ見ぬ強豪”幻想は高まる一方だった。その幻想は裏切られることはなかった。
 内容は
 タンザニアヴィクトリア湖ナイルパーチという外来魚が放たれた。そして繁殖に成功し、うまくグローバル化する経済に乗り、タンザニアの主要な輸出品の一つとなった。そこまでは良かったが、生態系は破壊され、水産工場からあぶれた人たちに従来の漁業で生活する道はもはやなかった。そして先進国にナイルパーチが輸出される一方でタンザニアでは大規模な飢餓の発生が懸念されている。おまけに生態系の破壊されたタンザニア湖ではナイルパーチもいつまで棲息できるかわからないときた。
 ヴィクトリア湖は生態系の多様性からダーウィンの箱舟と呼ばれていたらしい。そのダーウィニズムの適者生存の論理を社会科学の分野に援用したソーシャル・ダーウィニズムに後押しされた「自由な国際市場」が本家の箱舟を沈めてしまうのは皮肉としか言いようがない。

 ファーストシーンは、ヴィクトリア湖に映る輸送機と機本体、この構図は単純ながら映画全体を巧みに表している。ここだけでなく全般的に絵造りがうまい。続く管制塔での蜂か蝿と管制官のシークエンスはレオーネの『ウエスタン』のパロディになっていると言えなくもない。
 国立研究所で夜警をしている男がやたらハードボイルドで凄みがあったが、得物が21世紀の話だよね?といいたくなるようなもので少し可笑しい。
 現地人だけでなく、運び屋の旧ソ連圏?の航空スタッフのインタヴィューにも多く時間を割いていて、重層性を出すことに成功している。
 後作品内で語られている武器密輸は疑惑の域を出ていないという印象を受けた。
 グローバリゼーションの光と影はもう何回も言われているが、それでもみて良かったと思わすだけの映画だった。この作品が秀作であるというのは
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061206-00000055-sph-ent
 この抗議でも証明されている。
そこでの

魚貿易は重要で成功しているビジネス

 ビジネスとしては成功してるんだよな。国家が成長していく上で資本の集中が必要で、そのためには「金持ちになれる人から金持ち」にというのも納得できることなんだが。