パッション(メルギブのじゃないよ)

 ドイツ映画祭の目玉の一つ。生演奏付で前売り2000円、でルビッチとなれば絶対お得ということで観に行ってきた
 原題はMadame Dubarry、(デュバリー夫人)誰かと言えば、ルイ十五世の愛人で日本人にはマリー・アントワネットに不潔よ! と言われて宮廷を追放される人として有名……かな。1918-19年のドイツ映画で勿論モノクロ、サイレント。
 粗筋はこんな感じ。

パリのお針子ジャンヌは恋人アルマンともアツアツw、だけど人並みに玉の輿願望もある女の子。ところがアルマンったら熱くなりすぎて恋敵のスペイン大使を刺しちゃった。ジャンヌは成り行きで(三又目)デュバリー伯爵に囲われることに。さらに伯爵にコルシカ遠征の戦費負担の命が下る。これに対し伯爵はジャンヌをルイ15世に差し出す。こうかくと悲劇的だが彼女自身もこのことを出世と捉えている。そして色仕掛けでアルマンに恩赦を出させる。で傾国の美女となり贅沢でフランスの屋台骨を揺るがすまでになる。だがルイ15世崩御直後追放され、数日後バスティーユ襲撃。ジャンヌも囚われる。革命裁判所判事となったアルマンも彼女を救えず、ギロチンの露と消えた。

 ジャンヌは決してイノセンスとしては描かれておらず、男を手玉にとる手管を知り、宝石を目にすると物欲に駆られた表情をするのがすばらしい。こういうのを等身大の人間というのじゃないかな。(某七光り監督とは大違いだ、ちゃんとギロチンのシーンもある)
 さてストーリーが史実と反していると思った方(ルイ15世崩御からバスティーユ襲撃までは大分時間があるとか)、
 理由は製作年にある。1918年と言えば第一次世界大戦末期、ドイツにとってはフランスは敵国、つまりプロパガンダ的要素がふんだんに入っているんですね(上映中もしやと思って終映後、勇気を出してドイツのフィルムの貸し出し元の方に伺ってみたら「そういうことです」と言う答えを頂いた。ドイツ語が出来ないので英語でのアタックだったけど)。
 こっから先は勝手な解釈だが、贅沢三昧で国を潰したというイメージならマリー・アントワネット。だが何しろ同盟国オーストリーの姫君だからそうはいかない。そこで純フランス人のジャンヌ(=デュバリー夫人)にその役が背負わされることになったんだろう。(ルイ十六世一家は革命軍に取り囲まれながらも、毅然としてティュルリー宮殿を退去するといった描かれかた)
 しかしセットとエキストラの豪華なこと豪華なこと。とても戦争中の映画とは思えない。説明によるとルビッチは市街戦のシーンの仕上げをしていた時、ポツダム広場ではドイツ革命でガチ市街戦が行われていたそうな。
 他にも女装してバスティーユ襲撃をするサン=キュロットとか見所一杯というか全篇見所といった映画だった。