『フロスト×ニクソン』 

 またも父親を乗り越えなければならない子供の話、とは言え結構面白かった。
 
 ウォーターゲート事件で史上唯一任期途中で辞任した大統領ニクソン。辞任と後任のフォードによる大赦があるとはいえ、国民の怒りと関心は収まらない。キャリアアップを狙うイギリスのトークショー司会者フロストは一世一代の勝負にでる。ニクソンのインタヴィューだ。事件への関与を認めさせれば大金星になる。ニクソンもこの若僧を利用して敗者復活を目指していた。
 
 エディプスだけでなくカインとアベルの話でもあって
  フロスト達は突っ走るだけの子供でカイン。
  ゲヴィン・ベーコン演じるニクソンに心酔する補佐官が良い子のアベル
 ただし父ニクソンに受け入れられるのはカインのほう。この神サマ、根本敬の言うとおり堅気じゃありません。

 ベトナム戦争あたりまでのアメリカを歴史モノとして描く映画でジャンルが出来そうだ(『ブギーナイツ』とか『アメリカン・ギャングスター』とか『ドリームガール』とか)。その中でのオリジナリティは時代性を出す細工が少ないこと。ヒット曲やオモチャなんかを使う手法がほとんどとられていないのだ。『大統領の陰謀』コンビすら出てこない(本物のほうね)。タイトな印象に仕上がっている。劇中で語られるTV(この場合映像)の力、物事を一瞬の内に切り取ってしまう力にかけたのだろう。