壊れた神々

 ラテンビート映画祭にて。はっきりいって失敗作だなあ。
 20世紀初頭のハバナ、表社会はアメリカに、売春組織はフランス系組織に仕切られていた。そこにヤリーニという女衒が立ち向かい、フランス系組織のボスと相撃ちになった。裏社会の出来事とはいえ、列強に一矢報いた彼は国民的英雄となったというのが話の枕。
 時代は移って現代のハバナ、大学の女性教員がヤリーニの時代と対比させつつ現代の売春組織の調査を試みていた。家田荘子か? と思ったら少し顔も似ている。「極道の妻たち」は「愛した男がヤクザだった」というのがテーマだったが、こちらはそれに「女衒は娼婦を愛するようになる」というのが加わっている。
 で現在のハバナ裏社会を仕切っているのがロサンドで、スペイン語圏版ブードゥーとでも言うべきサンテリアの祭司でもあり、ヤリーニの遺物を所持し自身の権威にハクをつけていた。彼がトランスフォーマーでいうとメガトロンで、スタースクリームにあたるのがアルベルト。現役感たっぷりで資産家の未亡人や先の大学教員をコマしたりとお仕事に励む毎日。この二人、サンドラという元娼婦を巡って三角関係を形成。まあ映画ですから破綻が訪れますわな。
 日本人は少なくとも黒社会映画に関しては目が肥えていて、その基準で見るとキビシイ出来。中々抗争は激化せず、バイオレンスの面では完全に肩透かし。ヤバイ、ヤバイといわれているロサンドの組織も大して人数がおらず、テレビの「夜王」の北村一輝のホスト軍団のほうがよっぽどスケール感がある。では抽象性をあげて様式美の世界に持ち込みたいのかと思えば、中途半端に娼婦への取材場面が出てきて引き戻される。それに警察や買う側の客の証言もなくこれまた不徹底。
 タランティーノ風の時間軸を行ったり来たりする編集とカメラワークは、少々落ち着きが足りない気がするがまあ合格点。音楽は流石キューバ、いいねえ。あとエロシーンは充実。